大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)3090号 判決 1952年3月18日

本籍

石川県河北郡浅川村字角間八五番地

住居

金沢市彦三三番丁六番地

薪炭商

坂友一

大正五年一月一〇日生

右の者に対する詐欺被告事件について昭和二五年一〇月九日名古屋高等裁判所金沢支部の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人荒谷昇の上告趣意は、末尾添付の書面記載のとおりである。

第一点について、

所論は、刑訴規則二四六条違反を前提として原判決の憲法違反を主張するものであるが、同条において判決書に記載を要求せられているのは重要な答弁の要旨であるところ、原審公判調書によれば、検察官は、原審において単に弁護人の論旨は理由がないと思料するから控訴棄却の判決を求める旨答弁しているに過ぎないのであつて、右答弁が、同条にいわゆる重要な答弁にあたらないことは明らかであるから、これを判決書に記載する必要はなかつたものと解しなければならない。よつて右憲法違反の主張はその前提を欠き理由がない。

第二点について、

所論は、刑訴四〇五条所定の上告理由に当らない。なお、原判示の趣旨は、第一審判決の認定した犯罪事実は公訴事実と同一であり、かつ事実を認定するについては、訴因変更の手続を要しないというにあるものと解し得られるから、原判決には所論のような判断遺脱の違法はない。

第三点について、

所論は、刑訴四〇五条所定の上告理由に当らない。仮りに所論のように、第一審判決に、理由に、くいちがいの違法があつたとしても、刑訴四一一条を適用すべき場合とは認められない。

第四点について、

論旨引用の判例は、単に小切手を騙取したのみで、これを現金化しなかつた場合においても詐欺罪が成立する旨を判示しているに過ぎないものであつて、本件のように小切手騙取の後、更にこれに基いて現金を騙取した場合に、その如何なる部分について詐欺罪が成立するかという点に関しては何等判断を示しておらないものであるから、右判例は本件に適切でなく、原判決は、右判例と相反する判断をしたものとは認められない。

よつて、刑訴四〇八条により全裁判官一致の意見をもつて主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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